「女性は甘い物が好きでジビエが苦手」その意識はぶち壊す必要がある
女性は甘いものが好きで“ジビエ系”が苦手?本当に?
甘いものや可愛い盛り付けを見て「女性が好きそう」というコメントが出たり、「女性だから癖のある肉は苦手かな」とかロゼワイン見て「女性が喜びそうですね」とか。レストラン業界にいて良く触れる概念です。
でも私はそういうコメントを聞くたびに、性別で括って安易に分断されてると感じます。甘いものが好きで牛豚鶏以外の肉は苦手で軽めのワインやロゼが好きな女性、確かにいるでしょう。でもそういう男性もいるし、そうじゃない女性もいますよね。
ジビエ尽くしコースの企画参加者に女性が多かったというポストに「意外にも」とつく。そのお店のメインの客層は明らかに女性が多いから知っているはずなんです、性別で肉の好き嫌いは左右されないって。それでもそう思ってしまう。
かくいう私も、女の子はピンクや赤、人形遊びとままごとが好きで、スカートを履いて化粧をしてヒールを履いて、上品な言葉遣いをし、炊事洗濯家事能力を磨いて良妻賢母になれという圧力の強い社会で育ってきたのでそういう男女の枠に囚われてしまっている人も理解できる。
でもそろそろその枠から出てきてほしい
だって知っているでしょう?
あなたの周りに「甘いものと可愛いものが好きでジビエ系が苦手で軽いワインやロゼが好き」な女性はどれだけいますか。あなたのお店に来るお客さん、ジビエ系が苦手な方の男女比そんなに顕著ですか?
女性客が「強いワインは好きじゃない」と言ったら「女性だから」。でも男性客が「強いワインは好きじゃない」と言っても「男性だから」ってならないことに違和感を覚えてほしい。
私たちは別の生き物じゃない
女性だから甘いものが好きなんじゃない、女性だからロゼが好きなわけじゃない、ジビエ系の肉が苦手なのは性別が女だからじゃない。全部、男性がそうであるように、個人の好み。
でしょ?
「男性は癖のあるワイン苦手な人が多いですからね」って言ったり言われたりする違和感を同じように女性にいう時も持ってほしい。男も女も同じ人間、同じように色々な意思と嗜好を持つ個人なんだから。
枠を捨てて手を取り合おう
ドイツ企業のCMが炎上していることを知っていますか?白人中年男性の汗と土まみれの下着を真空パックして自動販売機で売り、購入したアジア系女性(日本の設定だそうです)が臭いを嗅いで興奮するという、非常に侮蔑的で醜悪な内容です。
↓非常に不愉快なCMと、抗議署名はこちらから
これを見て、自分のこととして怒れる人になってほしい。怒っている女性と一緒に立ち上がれる意識を持ってほしい。侮辱されてるのは違う性別の他人じゃない。あなたの大切な家族であり、友人であり、恋人であり、あなた自身。
あなたの単語のチョイスから社会の溝は埋まっていく
実体のない枠で囲ってあたかも自分とは別の生き物のように語ることは、社会を分断させてしまう。男性脳、女性脳という概念も明確に否定されている上、今や性別は2つじゃない。
体力や腕力、骨格などの明白な違いは別として、嗜好や感情、行動を2つの性別で分類するのをやめていこう。小さなフレーズのチョイスからでも人の意識は変わっていく。あなたが変わることで社会も少しずつ変わっていく。
自分の中の無意識な枠からぶち壊そう
問題の直接的な当事者でなくても、差別されている人と一緒に怒れる人になりたい。無神経なマジョリティになってはいけない。私もそう思いながら日々自分をアップデートしているところ。
みんなが生きやすい世界へ、あなたも一歩踏み出しませんか。
私が声をあげようと思った理由
SNSでは女は愛想笑いをしない
ヤれる女子大生ランキング、三越のパイ投げ広告、LOFTがバレンタインデーにコア顧客層を怒り狂わせたいがみあう女子達のCM、最近ではママ語翻訳なんていうバウリンガルをグリコが出しました。溢れるミソジニー。これが炎上する、つまり女性が発言の場を持ち始めたのはとてもいいこと。上のフレーズはtwitterで呟かれたものですがその通りだと思います。
社会では女性は往々にして下の立場。職場で自分の意見を表明したら容易く椅子を失い次の就職先だってままならない。だから不愉快なことがあっても愛想笑いをして流すことしかできなかった。悲しいかな、この長年の経験から女性たちは「スマートに受け流すことこそ大人の女性の望ましい態度」と人生の後輩たちに説いてきました。私も数年前までそう思っていた1人。
でもSNSの発達と浸透で、女性たちは安全に自分の声を発信し共感の声を上げることができるようになってきました。嫌なことは嫌。間違っていることには間違っていると言えるようになってきた。アメリカのme too運動から国内でも色んな声が上がり始めて、私も何か関与したいと考えました。
それでも私は尻込みしてた
ヤれる女子大生ランキングに抗議の声をあげて署名を集めた大学生たちの勇気と行動力は素晴らしかった。でも私は署名するのも結構ためらった。
両親は悲しいことにシーラカンスの仲間。政治的な話が食卓に上がることもなかったしむしろタブーだった。選挙で誰に投票したのと幼い頃に聞いて母親に怒られた思い出もある。
だから高校で世界史を学び大学で法律を学んでもパブリックに発信したり政治思想を持とうとは思わなかった。今も政治については不勉強で政治的立場を語る頭はない。
でもそれじゃ最悪のヘアカットと同じ!
これ「キューティー・ブロンド2 ハッピー・マックス」の中で主人公がアメリカ両院を前にスピーチするシーンのセリフ。
憧れの美容院に行ったらカラーもトリートメントも最悪、しまいにはおかっぱ頭にされてもうサイテーだったという思い出話に続いたのが下のセリフです。
(以下映画のセリフより抜粋)
First I was angry. And then I realized my anger was completely mis-directed. I mean, this wasn’t the salon’s fault. I had sat there and witnessed this injustice, and I had just let it happen. I didn’t get involved in the process. I forgot to use my voice. I forgot, to believe in myself. But now I know better. I know that one honest voice can be louder than a crowd. I know that, if we lose our voice, or if we let those who speak on our behalf compromise our voice, well then this country, this country is in for a really bad haircut.
間違っていたのは美容院じゃなく、間違いを眺めていながら途中で意見を言わなかった自分。自分を信じず、声をあげなかった自分。でも今は、1人の正しい声が群衆の声をかき消せることを知ってる。もし私たちが声をあげず人任せにして妥協したら、この国は最悪なヘアカットと同じ。
So, Speak UP, girls!
レイプに抵抗しなければ合意があったと見なされて不起訴相当、レイプに抵抗すれば死体にされ、告発すれば誹謗中傷される国、日本。「そういうことは上手くやらなきゃダメだ」なんて趣旨の発言を政治家がカメラの前で平気で言う国、日本。
この国はあまりにも女性を客体化しすぎてる。ロリ、女子高生、女子大生、結婚すれば妻、嫁、子供ができたらそこから一生”ママ”!名前をつけたフレームでくくって一緒くたに語られるのはもううんざり。
女性である前に我々は人間!
この認識が変わっていかない限り我々の置かれている状況も良くならないし、これからこの世界を生きていく人たちがあまりにも不憫。そしてシーラカンスだらけの世界を変えていくのに私のようなさしたる社会的地位も発言力もない人間ができるのは、自分の見える範囲に対してだけでもいいから声を上げること。
ごまめの歯ぎしり、実に結構。黙っているより私は胸を張れる。たくさんのごまめが歯ぎしりしたら波くらい起こせるかもしれない。小さい魚は数が多いのだ。
だから私は「目を覚ませ飲食店スタッフ!」と叫ぶことにした
出勤してから12時間で家に帰れるのも稀なこの業界、同じ建物の中で同じスタッフと、家族より長い時間過ごしています。だから自然と視野も狭くなりがち。時間がないもの。家に帰ったら何か食べて風呂に入って寝るので精一杯。でもそれじゃあ、めまぐるしく変化していく世界についていけない。
価値観はどんどん変わっています。我々はそれに追いついて価値観を毎日アップデートしていかなければ。全てはお客様にハッピーになってもらうために。そして自分自身をどんどんアップグレードしていくために。
怖がらないで。私は戦争をしたいわけじゃない
この手の話に抵抗感がある人は、こういう価値観に触れるだけでも触れてみて欲しい。別に私は特定の個人やジェンダーを非難したいわけじゃない。女の敵は女じゃないし、男でもない。こう言う議論の場には必ず、自分を守るためにこちらに銃を向けてくる人がいる。でも本当にその銃口はこちらに向けるもの?同じ方向に向けて一緒に戦っていくべきものじゃない?
私たちはフレームで括られた者同士で戦争したいわけじゃない。ただ、いま生きづらいと感じている人が生きやすい世界に近づけたいだけ。
読んで、調べて、理解を深めて、共感したらシェアして。それだけでも素敵なことだと思う。
一人一人が少しずつでも互いの思いを理解して歩み寄っていくことで色んなことが良い方向に変わっていくはずなのだ。
語彙力を磨こうではないか
わんこ見ると語彙力喪失しますよね(ネコ派の人はネコで喪失してください)
昨日の「女性におすすめ????」で、それ性別に関係ない言葉をちゃんと考えて言い換えよう、安易なキーワードで手軽にまとめるのやめようという話をしました。何もジェンダーに関係するワードには限らないのですが似たような反応を生む単語で日本において蔓延しているものがありますよね。
女子力高いですね
これです。上手く作れた料理の写真を見せた時、心の安らぎのために部屋に飾った花の写真を見せた時、お気に入りのティッシュケースに入れたティッシュを見られた時、よくこのワードで「褒め」られます。
何度か足を運んだレストランで少しだけ話をするようになったスタッフさんに言われることもありますね。
「ご自分でも料理なさるんですか?女子力高いですね!」身に覚えがあるサービスマン諸氏、いらっしゃるのでは?
女子力高いねが放たれる対象はその女性の、料理がうまい、掃除が上手、整理整頓が好き、身だしなみに気を使ってる、かわいいものを持ってる、おしゃれがキマってる……そんな感じですよね。
でもこれってさ
女子関係なくない?
料理がうまい、掃除が上手、整理整頓が好き、身だしなみに気を使ってる、素敵なものを持ってる、おしゃれがキマってる、性別に限らず素敵なことじゃないですか。人間力とか生活力とか、力のついたワードにしたいならそっちでいい。
炊事洗濯は女のやること、というシーラカンスみたいな概念が根底にあるわけで、少なくとも私は女子力高いねを褒め言葉だと受け取っていません。言われた瞬間、ああ、この人シーラカンスに育てられたのねと失望するだけです。
そんなの特殊な一握りだけだと一蹴しても結構。でも少なくとも私の周りにはシーラカンスの群れから自由になりたい女性がたくさんいる。
今目の前にいるお客様がどんな価値観を持っているかなんて数時間で判断できますか?
無理でしょう。私だって飲食店で二度と会うかどうかわからないスタッフ相手にジェンダーなんか解いて美味しい料理を冷めさせたり最悪な食事体験にしたくないですから、よほど酷いことを言われない限りシーラカンスに愛想笑いをして流すでしょう。そしてあなたはそれを「喜んでいる」反応だと誤解して化石になっていく。
さてここでおさらいです。
安易でキャッチーなフレーズから離れよう
女性におすすめ、女子力高いですね。もちろん素直に喜ぶ人もいます。でも喜ばない人も確かに存在します。そして喜ばない人は見えないアンチになって増えていく。無自覚に繰り返していたらそれは将来確実にあなたの首を絞めることになるでしょう。
素敵ですね!が困った時の救世主
かわいいという褒め言葉も褒め言葉にならない人がいるよな、と気づいた私は最近、反射的に「かわいい〜!」と言ってしまいそうな時「素敵!」と言い換えてます。可愛さを求めていない人にもこれなら嫌な気持ちはされないはず。そしてこれはいろんなことに使えます。料理がうまい、素敵!掃除が上手、素敵!
女子力高いですね!ロボットを体内に飼っている人はおしゃべりなC-3POが決まり文句を放つ前にまずは「素敵ですね!」と言ってみましょう。そうすればきっと、もっといろんな言葉で相手を褒めようと、お客様に寄り添いながら良い気分を味わってもらえる表現が探せるようになるはず。
安易なフレーズの危険性を知ろう!そして語彙力を磨こう!
女性におすすめ??????
ワインを選んでいる時どこのショップでも必ず言われる言葉
飲みやすくて女性におすすめです!
それは嬉しい!美味しそうなワインを選んでもらえてよかった!と思う人もいるでしょう、もちろん。
でもこれつまり
フレッシュでフルーツ感も生き生きした親しみやすいワインで、普段あまりワインを飲まれない方にも好評ですよ!
と同義ですよね。普段ワインを飲みつけていない女性の方なら「うん私にぴったり」となるでしょう。でもね、私もこれ言われるんです。ソムリエがそれ言われたらそりゃ苦笑するよねって話ではなくて、飲食業界に入る前から思ってました。
女だって酒もワインも大好き人間がいることご存知ですか
と。女性=酒に弱い、ワインにも詳しくない/男性=酒に強い、ワインに詳しいという無意識の方程式が頭の中にあるので後者をいうより簡単な前者のセリフを喋ってしまうのでしょう。
でも違いますよね。酒に強い女性もいれば酒に弱い男性もいます。性別関係ありません。
そう
性別で判断するのやめませんか
私は男性とレストランに行ってもワインリストを率先して見ますし、連れの男性がカンパリオレンジでも生ビール飲みます。そんなことに目くじら立てられてた時代からまだ10年も経っていないけど、今や「男性より強い酒を女性が飲むなんて」というのを例えばCMで流したら大バッシングでしょう(男女の連れでアルコール飲料1ノンアル1とかの注文の時もちゃんとどちらがどちらを飲むのか聞いてから出しましょうね)
女性におすすめ、は時として不愉快です
少なくとも私はワインショップでそう言われるたび、私のことを知りもしないのに性別だけでカテゴライズして安易なおすすめするのやめてくれませんか、と思っています。飲食店やワインショップはお客様との瞬間的な接触が多いですから、相手の人となりをすぐに判別するのはベテランでも不可能でしょう。実際ソムリエを初心者扱いして懇切丁寧に「飲みやすい」「初心者向け」「女性にもおすすめ」「クセがない」と説明してくれる店員さんのなんと多いことか。
性別は忘れて基本に戻って
例えばワインショップなら「普段からワインを飲んでいるのか」「どんなワインが好きか」「どんな料理と合わせる予定なのか」「誰と飲むのか」そういうところから普通に好みを探っておすすめすればいい話。確かに大きなカテゴリーでまとめてざっくりキャッチーにおすすめするのは楽だし便利ですが、相手のことを何も知らないのにそれをやるのは非常に危険。だって不快になったお客は(あーあ、またこのパターンか)とその「店」自体にがっかりして帰っていく。親切に認識のズレを解いてくれる人なんていません。
的確なおすすめを聞き出したいときは
お客さんの立場になる方で「スッキリしていて軽めの口当たり、生き生きした果実味の若々しいワイン」を飲みたい方は「女性におすすめ」ロボットにそのまま喋らせてOK。合わせたい料理があったり自分や一緒に飲む人が上記のようなワインを好まない場合は「そういうのじゃないのがいいです」と言えばロボットは自分が人間であることを思い出して人語を操りあなたにぴったりなワインを教えてくれるでしょう。
もちろん、うるさい自分が飲むものくらい自分で選ぶんじゃ、という方は「自分で選べるので結構です」と追い払えばいいと思います(店員の皆さん、ここで情報を補足する必要はありません。一人で狩を楽しませてください)。
女性におすすめ、と言いかけたら立ち止まってほしい
今まで特に意識せず使ってきた言葉やフレーズをいきなり使用禁止するのは結構大変。でも意識するだけでも減らせます。女性におすすめ、と言いそうになったら別の言い方で自分の言いたいことを組み立てて伝えましょう。きっとサービスマンやセールスマンとしてのあなたのスキルや魅力もアップしますから。
目を覚ませ飲食店スタッフ!時代は動いてんだぞ!!について
飲食業界の価値観アップデートは遅れてる
激動の時代!
軽井沢の飲食店でソムリエをやっています。
飲食業界に入ってから9年、胸にブドウのバッヂがついてから4年。今でも時々「女性のソムリエは珍しいね」と言われます。そう、勤務時間も長く体力仕事なソムリエは今まで男社会でした。
週間SPA!のヤれる女子大生ランキング、三越のパイ投げ広告、LOFTの意味不明なバレンタイン広告などへの抗議にみられるように、SNSを介して団結した、女性の地位向上と社会の価値観刷新に共感する人たちの声はますます大きくなっています。
飲食業、無関係じゃありません。何か声をあげたくてブログを開設しました。でもそれだけだと記事の更新が持ちそうにないから好きな料理とワインのことも書くよ。
「女性におすすめ」「女性に人気」「女性は嬉しい」って言ってません?
よく聞きます。男性に限らず女性のスタッフもよく言っているのを聞きます。ワインショップに行ってもよく言われます。
何が悪いの?と思った方にも、イラっとするよねわかると思った方にも読んでほしい、そんな記事を書いていく予定です。
飲食店スタッフこそ敏感に価値観のアップデートを!
だって我々はお客様を楽しませるのが仕事ですから。古いままの価値観で仕事をしていたらその認識不足な言動で、楽しんでほしい方に不快な思いをさせてしまいます。
悪気がなかった、良かれと思って、なんて言い訳にもなりません。
とはいえ私も、当事者だから見えるものがあるというだけで知識や認識はまだまだブラッシュアップが必要だと感じています。記事を書きながら日々認識をアップデートして人間としてアップグレードしていきたいと思っています。よろしくお願いします^^